新会計基準、FRS 102の実施迫る Part 3 – Intracompany Loan

FRS 102の施行について過去に2回ほど書いたが、まだ特定の会計処理や開示情報について触れていない。FRS 102は今年の9月に再びアップデートされて、若干の変更が加えられているが、何よりセクション1Aという小企業向けの開示情報減免に関するレジームが加えられている。このように頻繁にアップデートを繰り返されており、今後もまだまだ追加項目や変更が発生することが予想される。影響があるエリアについては全てをここで論じるつもりもないが、例として3つ、Intercompany loans、Goodwill/intangible assets、Deferred taxについて軽く触れてみたい。そして今日はその中からIntercompany loanについて。

Intracompany loanの計上方の変更はかなりグループ企業にとって悩ましい問題となり得る。在英の多くの日系企業はグループ子会社であるから、多くが当てはまるだろう。グループ内会社間の貸付を無利子もしくは一般的な銀行ローンや社債に比べて明らかに低い利子の設定にて行っている企業は多い。税務上の調整はさておき、UK GAAPにおける決算書では、そのままのローン残高を計上すればよかった。ところがFRS 102では、もし第三者間でのローンであれば発生しているはずの利子を計算して、割り引いた額での計上を求められる。つまりPresent Valueである。本来発生しているはずの利子とは、例えば銀行で同様の条件の貸付を取り付ける場合に発生する利子のことである。例えば、日本の親会社が2年の会社間ローン£1mとして英国子会社に無利子で貸付を行った場合、もし銀行であれば5%の利子が妥当であったら、5%を2年分割り引いた額がバランスシートに計上、毎年その発生しているはずの利子はP&Lを通して認識される。

そうなると疑問があるはずだ。ローン額の認識時にローン残高とキャッシュとの差額、つまりトータルの割引額は初期認識の際にどこに行くのか。これは親会社からすれば子会社への投資の一種とみなされ、親会社ではInvestment、子会社ではCapital contributionとなる。つまり英国子会社では、Equityに計上されることになる。先ほどの親子会社内の£1m2年ローンの例だと、初期認識とその後の計上は下記となる。

初期認識
Dr Cash                           £1,000k
Cr Intracompany loan     £907k

Cr Capital contribution    £93k

1年目
Dr Interest expense (P&L) £45k

Cr Intracompany loan        £45k

2年目
Dr interest expense (P&L) £48k

Cr Intracompany loan       £48k

Dr Intracompany loan        £1,000k

Cr Cash                              £1,000k

いかがだろうか。計上自体が面倒になることは明らかだが、何よりもその「本来発生しているはずの利子」を計算することが厄介であろう。様々な条件を考慮する必要があり、単純にLIBORから拾ってこればいいというものでもない。リスクファクターや会社のファイナンシング構造など考えなければならない。監査上は最後は重要性の問題になるだろうが、社内で一定の計算プロセスやルールを構築することが求めらるだろう。

参考 FRS 102 ver. September 2015、ICAEW FRS 102 and Interest-free loan