英国における監査対象の基準

これから英国に進出する日系クライアントからよく繰り返し受ける質問がある。初期は非常に小規模で展開する計画であるにもかかわらず、どうして会計監査を受けなければならないのか、という質問である。確かに日本では上場大企業であり、親会社を始めとするグループは、金融商品取引法と会社法それぞれの下、会計監査を受けなければならない。だが英国子会社は非常に小規模であるという場合はよく見られ、グループ監査上も重要性からほど遠く、場合によっては連結の対象外であったりもする。にもかかわらず、英国で監査を受けなければならない理由が分からないということである。

これは英国のCompanies Act 2006、つまり会社法の条件によるものである。477条によると、会社法の定めるスレッショルドに収まる「小企業」は監査免除を受けられるとある。その小企業の基準については382条を参照しており、同条では現在、売上£6.5m以下、総資産£3.26m以下、従業員数50名以下、という3つのスレッショルドのうち2つを満たす企業と定義されている。ちなみにこれらの数値は来年それぞれ、売上£10.2m、総資産£5.1mに引き上げられる(従業員数は変更なし)。

上記の基準には条件が付随している。384条を見ると、その英国企業の業態について触れており、上場企業や、銀行業や保険業はその「小企業」の条件を満たせないとしている。さらに、対象会社自体が条件を満たしていても、グループの一部に同様の会社があれば、「小企業」の対象外となってしまうことに触れている。ちなみに、会社法にて「Company」と書いてある場合は、英国Companies Actの定義による会社のことなので、英国外の「会社」は含まれない。

それならば、日本の親会社は上場企業でグループ内に金融サービス会社もあるが、いずれも英国会社ではないのだから、うちはこの基準を満たすはずで監査は受けなくていいのでは、という声が聞こてくる。そこでもう一度監査免除条項に戻ってみると479条では382 – 384条の「小企業」条件を満たしているかどうかに加えて、会社の所属するグループの規模が上記のスレッショルドを満たしていることを求めている。例外としては親会社がEEA国にある場合は、その親会社の同意のもと監査免除を受けられる。そうでない場合は、原則として小規模スレッショルドを超えるグループ内の英国会社は、単体では小規模でも監査免除の条件から除外されてしまうことになる。ちなみにこの479条の「Group」の定義は、“the group”, in relation to a group company, means that company together with all its associated undertakings となっており、「all its associated undertakings」を含むことになっている。つまり英国会社法下における会社だけでなく、国外の会社も含むすべてを「グループ」と定義している。そうなると、親会社を含む規模で見た時、到底小規模スレッショルドを満たすことはできないだろう。

会社法は随時更新されているので、上記で述べた内容は少しずつ変更があるかもしれないが、現状としてはほとんどの日系在英企業が英国の法定監査対象であることを理解していただけたと思う。

なお、私は法律家ではないので、以上はあくまで個人的見解としていただきたい。英国会社法のリンクを貼っておく。http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2006/46/contents