2015年から2016年に向けて

いよいよ2015年も終わろうとしている。クリスマスから新年にかけて休暇を取っている。毎年恒例だが、この時期に自分の棚卸をすることにしている。簡単に言ってしまえば、今年の反省と来年への課題の洗い出しである。2015年の年初に誓ったやるべきことの達成は50%弱と言ったところか。年末に振り返るたびにいつも思うのが、もし80%くらいの達成率だったとしても、どれほど自分の人生は変わっていただろう。そして懲りもせず、次の年こそは決めたことの100%達成を目指そう、と誓うのである。

物事は嘗てないほどの物凄いスピードで進化している。ほんの数年前まではスマートフォンなどというデバイスは存在しなかった。しかし今や身の回りのことはすべて1台のスマートフォンで完了してしまう、いや仕事のかなりの部分もカバーできる域まで来てしまっている。自動化の進歩も目を見張るものがある。これまでAI(人工知能)と言ってもの、人間がプログラムしたことを上手に速くこなす程度であった。しかし昨今のAIは完全に異なり、自ら学習する能力を持っている。インターネット上に氾濫する膨大な情報を自らの意思で収集、整理し、「思考」が可能になるほどの必要知識を得始めている。当然言語も話し始めているし、未来を予測して、判断することもできる。

19世紀の産業革命によってマスプロダクションが可能となり、農業従事者は職を失うと同時に、新たに工場での仕事を得た。20世紀に入ると産業ロボットなどの登場で、単純労働は機械に取って代わられ、工場従事者は職を失う一方で、大量のサービス従事者やホワイトカラーが誕生した。しかし今度のAIによる自動化で消えようとしている職業は、わずかに残った低賃金の単純労働のみならず、サービス従事者やホワイトカラー全般である。そこには我々の業界である会計士をはじめとして、弁護士、そして医者という専門職も含まれる。現実に多くの士業は近年、その業態を激しく変化させている。ソフトウェアの格段の進歩によって、かなりの専門的作業は効率化され、短時間かつ正確に完成するようになってきている。そこでは、特に経験も知識もないオペレーターでもソフトウェアの扱い次第で、過去にそこそこ「専門的」と呼ばれた業務が遂行されてしまう時代となっている。

この先に待っている世界は極度の格差社会と考えられる。これまでの産業の進歩は、常に労働者の収入の上昇に繋がっていた。産業革命によって、農村部から都市部に流れ込んできた新労働者は安定した暮らしが可能になり、消費の増大へと結びつくことによって、さらなる収入の増加へと繋がっていった。オートメーションによって、ホワイトカラーやサービス従事者の収入も単純労働者より大きく上がった。これがまたさらなる消費を生み出し、経済を牽引した。しかし近年の自動化はその逆の傾向を生み出している。単純労働の賃金は減少の一途の上その数、その受け皿となるべき新しい職が用意されていない。

一方で、一部の起業家、企業上層部やバンカー、専門家たちの収入は増加していった。これらのうち、バンカーと専門家の中では、消えゆく層と、さらに収入を増やす限られた層にはっきりと分離していく傾向がすでに始まっている。我々会計士の業界などその最たる例ではないだろうか。ここで起きていることは、かなりの部分がマニュアル化されており情報の取捨選択によって遂行可能なポジションと、高度な判断と創造性を求められるロールとの格差が確実に開きつつあるということである。そして、前者の「情報の取捨選択で遂行可能」な職業は機械に取って代わられ、確実に消え去る。後者の「高度な判断と創造性」が求められるロールは、クライアントのニーズが理解でき、リスクを取って判断を行い、そして新しい発想を生み出し、組織を成長させることであり、まだ暫くは人間を必要とするだろう。

ここで矛盾してくるのは、その後者に達するまでには、前者のような比較的単純な専門的ポジションでトレーニングや経験を積む必要があるという事実にもかかわらず、その比較的単純な作業が機械に置き換えられたら、どうやって経験を得て成長すべきか。教育だけで知識だけを詰め込んで、いきなり上位層に飛び込めるほどそのロールは甘くはないし、逆にそれで務まるマネジャーレベルであれば、そのポジションも既に機械に置き換えられているだろう。

残念ながら上記の課題については、いろいろ論議はされているものの決定的な打開策があるわけではない。私も正直なところ、AIの進歩の脅威についてはまだ実感が湧かない部分が多い。AIの未来について語りだせば、夜が明けてしまうくらい深い議題だ。一つだけ言えるのは、現在どのポジションにいようが自分自信の頭で考えて答えを導き出す努力を怠らないことが重要だということではないだろうか。そういった実力がつけば、優れたAIが登場しても、それらとどう付き合って、自分がどういった付加価値を与えることができるか考え出せるはずだ。少し大げさになってしまったが、2016年はアクセルを踏みつけながら、大きく成長すべく日々を大切に過ごしたい。やりたいこと、挑戦したいことは書ききれないくらいある。それを一つ一つ実現していきたい。皆様にとっても素敵な1年となることを心より願っています。

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